2020年度の入試制度改革に向け、徐々に出題傾向が明らかになってきました。
これまでの知識を正確にアウトプットするという資質での評価から、思考力・判断力・表現力などの「生きる力」をもった人物を評価するという点に評価の重点が変わることは公表されていました。
そして実際にその変化に対応した出題がされはじめています。
特に高校入試問題において多く見られており、今までの受験対策が奏功せずに涙を飲んだ受験生も多かったのではないでしょうか。
具体的には設問と解答が1対1ではなく、出題者の意図を読み取って自分の言葉で表現させる問題が増えています。
例えば以下のような設問です。
ある中学校では,体育大会のため,実行委員の生徒74人が,倉庫から長机と椅子を運動場に運び出し,受付用,本部用,来賓用として設置することになった。1,2年生の実行委員が長机を2人で1台ずつ,3年生の実行委員が椅子を1人4脚ずつ運び出した。運び出した後,長机を,受付用として4台設置し,残った長机を,本部用と来賓用として同じ数ずつ設置した。次に,椅子を,受付用と本部用の長机1台につき3脚ずつ,来賓用の長机1台につき2脚ずつ設置したところ,運び出した長机と椅子をちょうど全部使うことができた。
このとき,運び出した長机は全部で何台あったか。また,運び出した椅子は全部で何脚あったか。方程式をつくり,計算の過程を書き,答えを求めなさい。
方程式さえ完成すれば解法は標準的なレベルでしょう。
しかしながら、設問を読み解き方程式を組み立てることが非常に難しい問題です。
受付・本部・来賓と具体的な事例になることによって文章が複雑化しています。
3行文章が増えれば20%正答率が低下するというデータもあります。
ここで必要なスキルは複雑化な文章を論理的に読み解く力です。
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必修化されるプログラミング教育
2020年4月からは小学校で「プログラミング教育」が必修化されることはご存知のとおりかと思います。
巷ではプログラミング教室・ロボット教室が大流行だそうですね。
プログラミング教育の内容はというと、実はプログラミングという単語から想像されるような「コンピュータを使ってプログラムを組む」ということではありません。
文部科学省が、2016年6月に公表した「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)」明らかにした方針によると、プログラミングの基礎となる「プログラミング的思考」力を養う学習を、小学校の「国語、算数、理科、社会など教科学習の授業時間の範囲内で」行い、「コンピュータに意図した処理を行うように指示する」という内容です。
大雑把に表現すると、論理的思考力を養う課程と言えるのではないでしょうか。
求められているのは論理的思考力
論理的思考力とは、「物事を、筋道を立てて客観的に考える力」です。
そう考えると、入試の出題の傾向とプログラミング教育で育もうとしているスキルは一見関連性がないようでも密接に結びついたものになってきます。
意図的に複雑に組み立てられた設問を論理的に分解し、シンプルに理解することが必要で、それはプログラミング教育で身につける能力と同じです。
左で紹介した問題の他にも、「偶数と奇数を足したら奇数になる」というシンプルな命題を自分の言葉で説明することができるでしょうか。
私立大学生の60%が正しく説明できないという調査結果もあります。
論理的思考力を養うための読書
論理的に文章を読み解くために必要なトレーニングとしてもっとも有効なものはやはり読書です。
日本語は文節と文節の接続が曖昧であり、一つのことを表現するパターンが無数にあります。
例えば「わたし」に当たる日本語は主なものだけでも100以上あり、一人称の代名詞が世界一多い言語とも言われています。「すみません」の意味も文脈によって様々に変化しますし、単語の前後関係もかなりフリーな言語です。
これらを正確に、論理的に紐解くには文章に触れた「絶対量」がものを言うのです。
読書は習慣であり、習慣は絶対量です。
統計データにも、読書が習慣になっている人とそうでない人の論理的思考力の差には明確な相関関係が現れています。
「子どもの読書活動の実態とその影響・効果に関する調査研究 報告書」によれば、『就学前から中学時代までに読書活動が多い高校生・中学生ほど、「未来志向」、「社会性」、「自己肯定」、「意欲・関心」、「文化的作法・教養」、「市民性」、「論理的思考」のすべてにおいて、現在の意識・能力が高い。』という調査結果が出ています。
最後に…
読書を習慣化するには?「好きな本」や「忘れられない本」があると回答した高校生・中学生に読書習慣が多いことも分かっています。
幼いころに好きな本に出会うことが大切で、その出会いは大人が作り出してあげることができます。
新しい制度への対応方法が実はシンプルに【読書】というのはまた興味深くないでしょうか。
是非、生徒には先生が感動した、面白かった本を勧めてあげていただければと思います。
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