VUCA時代の生存戦略

コラム

VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った造語で、あらゆるものを取り巻く環境がめまぐるしく変化する中、予測不能時代を生き抜くキーワードとして、社会やビジネスシーンでも広く使われるようになりました。激変激動の時代を生き抜くには、どんな戦略を取り入れたらいいのか、そのヒントを探ってみたいと思います。

 

雑草の生存戦略

植物学者の稲垣栄洋博士は「雑草という戦略」(日本実業出版社)の著書の中で、「くっつき虫」という俗名で有名なオナモミという雑草の生存戦略を紹介しています。オナモミは、実の中に種子を2種類持っています。一つはすぐに発芽する種子、もう一つはゆっくり発芽する種子です。ライバルより早く発芽すれば優位に生き抜くことができそうですが、ゆっくり発芽する種子も同時に持つのです。どちらが優位かは置かれた状況や環境によって異なります。すぐに発芽した種子が人間の草刈りで全滅しても、ゆっくり発芽する種子があれば生き残ることができます。つまり、いつ芽を出すのが正解かわからない以上、雑草は相反する両方の性質を持つことで、予測不能で変化の激しい環境を生き抜くのです。

両利きの経営

スタンフォード大学のチャールズ・オライリー教授とハーバードビジネススクールのマイケル・タッシュマン教授の名著「両利きの経営」(東洋経済新報社)には、「二兎を追う」戦略が予測不能な未来を切り拓くことが述べられています。例えば、デジタルカメラという破壊的イノベーションの登場によって、主力の写真フィルム事業に拘り続けた当時業界1位のコダックが倒産する一方、主力のフィルム事業は続けながらも、フィルム事業で培った技術をベースにヘルスケア事業等を育てて躍進した当時業界2位の富士フィルムを例に挙げ、その違いは「両利きの経営」ができたかどうかにあったと論じています。「両利きの経営」は、既存事業の「深化」(深堀り)と新規事業の「探索」を両立させる経営手法です。塾業界で言えば、対面授業の教務品質を「深化」させつつ、オンライン授業やAI授業といった新規事業を「探索」させるやり方です。対面授業チームには生徒増や利益増を求めながら、AI授業チームには実験を奨励するという矛盾したマネジメントが必要になります。それまで対面授業を検討していた生徒がAI授業のコースに入塾する可能性が出てくるわけですから、当然塾内でカニバライゼーション(共食い)が生じます。そのため、「両利きの経営」が成功するには、「深化」と「探索」という異なる能力を併存させる組織能力が重要で、特にそれを率いるリーダーの役割が重要と指摘されています。リーダーは組織に対し「自分たちは何者で、何をする塾なのか」を問いかける必要があります。詳細は本に委ねるとして、予測不能な時代には、雑草の生存戦略と同じく、両獲りのマネジメントが重要という点では共通しています。

 

コロナ禍、高大接続改革、GIGAスクール構想、教科書改訂等、学習塾を取り巻く環境はこの2年で激変しています。このような時代には、気づいたときには塾業界の概念を覆すような新しいサービスが、あっという間に業界を席捲する可能性があります。今のうちに「両利きの経営」に取り組み、予測不能なVUCA時代を生き抜く様々な試みを探索してみてはいかがでしょうか。

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