啐啄の機

コラム

春を迎え、塾の教室では新人の先生方が希望に胸を躍らせ、賑やかになる時期です。人材育成はどの塾にとっても最重要課題ですが、長引くコロナ禍や時代の急速な変化によって、育成方針も変わっていくように思えます。

啐啄(そったく)の機

ひな鳥が卵から生まれ出ようとする様子を表した「啐啄の機」という言葉があります。ひな鳥が卵の殻を破って生まれようとする時、卵の殻をひな鳥が内側からつつくことを「啐」と言い、それに合わせて親鳥が卵の外からつつくことを「啄」と言います。卵の内側と外側からつつくタイミングが一致しないと殻は割れず、ひな鳥は外に出ることができません。人材育成では、部下が殻を破ろうとするタイミングで上司が適切な指導をすることの重要性が指摘されています。

キャリアは偶然に変わる

スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授は、「計画的偶発性理論」の中で、個人のキャリアの8割は、偶然に起きる予想もしなかったことによって決まることを明らかにしています。若い頃に抱いた夢や目標と、現在の自分の仕事はかなり違っていることが多いのです。もちろん、キャリアの8割が偶然に決まるといってもただじっと待つということではありません。クランボルツ教授は、偶然を計画的に起こすことが重要だと主張しています。その為に必要なこととして、絶えず新しい学習機会を模索し続ける「好奇心」、努力し続ける「持続性」、新しい機会は必ず来ると信じる「楽観性」、自分のこだわりを捨てる「柔軟性」、リスクをとって行動を起こす「冒険心」の5つの要素を挙げています。「冒険」した場所で努力を「持続」し、且つ「柔軟」で「好奇心」を維持し続けた結果、様々な機会に恵まれます。常に自分のまわりで起きている「出来事」や、人との偶然の「出会い」を大切にし、そこから起きる偶然のきっかけが数多く起きるよう、自分から継続的に行動していくことが重要になります。アップル創業者スティーブ・ジョブズ氏のスタンフォード大学卒業式での有名な講演「コネクティング・ザ・ドッツ」では、人生の様々な出来事や出会いを点に例え、「点と点のつながりは予測できません。あとで振り返って点のつながりに気づくのです。今やっていることが、どこかにつながると信じてください。」とスピーチしています。

 

厚労省の「能力開発基本調査」(令和2年度)によると、人材育成について問題があると回答した事業所は74.9%もあり、その内54.9%が「指導する人材が不足している」、49.4%が「人材育成を行う時間がない」と回答しています。4分の3以上の事業所が能力開発や人材育成に問題を抱えているのが現状です。そのような時代の「啐啄の機」は、殻をつつくのは必ずしも上司である必要はなく、偶然の出会いや出来事によって殻を割ってくれる人に出会うことでも可能です。ある時はオンラインセミナーで出会った講師かもしれません。またある時はデジタル教材の営業担当との出会いかもしれません。そのような偶然の出会いで殻をつつくチャンスが訪れるかもしれませんし、塾も組織として、新人の先生が様々な出会いや異質な出来事に遭遇できる場を用意することが必要です。教育者の森信三氏はこう述べています。「人間は一生のうちに逢うべき人には必ず逢える。しかも、一瞬早すぎず、一瞬遅すぎない時に。」様々な出来事や出会いの場こそが、人材育成の「啐啄の機」につながる時代です。

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