大人になると時間はなぜ速く過ぎるのか?

コラム

今年も残りわずかとなりました。子どもの頃の時間は長く感じましたが、大人になると短く感じます。なぜこうもあっという間に1年が過ぎるのでしょうか?

時間感覚

実験心理学を研究している千葉大学の一川誠教授によると、感じられる時間に影響を及ぼす要因には、体験した出来事の数や時間経過意識等、錯覚とも思える人間の感覚が影響しているようです。

体験した出来事の数が多いほど、時間を長く感じる「充実時程錯覚」と呼ばれる現象があります。

例えば、ボールをゆっくりバウンドさせる時と速くバウンドさせる時では、同じ時間であれば速くバウンドさせる方が時間を長く感じます。

大人にとっての食事の時間は、食べる、話す、の2つの出来事ですが、幼稚園児の食事の時間は、食べる、フォークで遊ぶ、こぼす、怒られる、泣くといった多くの出来事で時間が過ぎていきます。

この時、子どもが感じる時間は長くなります。大人の場合、過去に体験した出来事に真新しさがなくなり、毎日予想がつく出来事は一つの体験に括られ、新たな体験の数も減り、時間を短く感じます。

また、常に時間を意識すると時間を長く感じ、意識しないと短く感じます。

学校で常に時間割を意識する子ども達は、時間を長く感じるはずです。

一方、時間を気にせず楽しいことをしているとあっという間に時間が過ぎたと感じます。

このように、体験する出来事の数や時間を意識するかどうかで時間の感覚は変化します。

人生を長くするには、日々新たなことに挑戦し、体験数を増やしていけば良いのです。

塾に通う生徒にも、時間を短く感じるか長く感じるか、聞いてみると面白いかもしれません。

時計遺伝子

人間の体は24~25時間周期で変化しています。

目が覚めるタイミングや眠くなる時間帯を決めている「体内時計」と呼ばれるものがあり、体の一か所にあるのではなく、体中のほぼ全ての細胞内にあることが知られています。

2017年のノーベル生理学・医学賞は、この体内時計を動かしている「時計遺伝子」を特定した3人の米国人研究者に贈られました。

体中に散らばる時計遺伝子がそれぞれ違う時間のリズムを刻むと体内時計は狂ってしまいます。

そうならないよう、脳の「視交叉上核」という部位が司令塔となって、体中に散らばる時計遺伝子を毎日一定のリズムを刻むよう調節し、体内を流れるタンパク質を合成しています。

身体の代謝が弱まると時計遺伝子の活動も弱くなり、その結果、物理的に流れる時間を短く感じます。

年をとって代謝が弱まり、時計遺伝子が刻むリズムが遅くなると、時計を見たときに「もう1時間過ぎたのか」と短く感じるようになります。

実際の時間と体で感じる時間にズレが生じてくるわけです。

このことが、年をとると時間が経つのが速いと感じる要因に挙げられています。

美空ひばりの名曲「川の流れのように」では、人生を川の流れに例えてゆるやかに時が過ぎることが歌われています。

物理的時間で見ると、川の流れはいつも一定です。

しかし、代謝が活発な子どもの頃は川の流れより速く走ることができるでしょうし、代謝が落ちてくる大人になると、川の流れについていけず、遅れていくのでしょう。

そのとき振り返った子どもの頃ははるか遠くに見えます。

在日朝鮮人で詩人の金時鐘氏は、人生を振り返ってこう述べています。

「人生は短く、一生は雑多に長い」

時間が速く過ぎることは趣深いことかもしれません。

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