やり抜く力・グリッドはどう鍛える?塾教育と自己制御的要素の関係性

コラム

グリッドと呼ばれる言葉はご存知でしょうか。

近年では教育や自己啓発、ビジネスの分野など多方面から注目を集めている概念で、このグリッドを伸ばすことこそ自分を伸ばすうえで大切な要素だと言われています。

少し前には書籍なども話題になりましたが「言葉は聞いたことがあっても、意味はよく分からない」という方がとても多いと思います。

この記事は、グリッドと呼ばれる概念について、とくに子供への教育への影響や取り入れ方についてのご紹介です。

やり抜く力「グリット」の意味とは?

人間力を構成する三つの要素のうちのひとつが、「自己制御的要素」となっています。自己の目標に向けて、困難を乗り越え、やり遂げる力です。

「努力を継続する力」とも呼べるかもしれません。

アメリカでは、ペンシルバニア大学心理学教授のアンジェラ・ダックワース氏が、このやり抜く力のことを「グリット」と名付けて研究しています。

前大統領であるオバマ氏は、グリットの育成に重要性を感じ、二度の一般教書演説の中で取り上げ、教育省の最優先課題にしました。

たとえば、一つの例をご紹介しましょう。

全米の運動能力に優れ、成績も優秀な高校生14,000人以上の中から選び抜かれた1400人ほどが、陸軍士官学校(ウエストポイント)に入学できます。

しかしその内の20%が途中で挫折してしまいます。

ようやく入学を勝ち取ったのにも関わらず、大半が入学直後7週間の「ビースト」と呼ばれる基礎訓練に耐え切れずに辞めてしまうのです。

ダックワース氏はこの事例を基に、やり抜く力「グリット」は何と相関が強いのかを研究しました。そして2013年には天才賞とも呼ばれるマッカーサー賞を受賞しています。

グリッドと教育の関係は?やり抜く力は成績だけでは測れない

教育現場では、よく教師や講師が生徒に「努力できるのも立派な才能」だと語ります。

グリットは先天的なものなのでしょうか?

それとも後天的なものなのでしょうか?

知能や成績とどういった関係があるのでしょうか?

ビーストの訓練に耐えきれず辞めてしまう生徒は、半数が志願者総合評価スコア(成績、体力、リーダーシップなどの総合評価)が最低ラインです。

しかし、残り半数は最高評価に値するほど優秀な生徒たちでした。

つまりグリットは才能とは関係ないということになります。

そこでダックワース氏はグリットを測定するテスト「グリット・スケール」を作成しました。

グリッド・スケールをテストしたところ、ビーストの訓練に最後まで耐え抜く生徒と、グリット・スケールには相関が見られることを突き止めたのです。

グリットスコアは10項目の回答を5択から選び、そこに記されている得点を加算してから最後に10で割るという簡単なものです。

このスコアは、入塾時に試験などでの学力を確認し、学習アドバイスをしたり、適正なレベルのコースを提示することに活かせるはず。

グリット・スケールを確認していくことも、今後の指導に役立つのではないでしょうか。

グリットをトレーニングする!やり抜く力と脳を鍛える方法

グリッドは先天的なものではありません。

つまりやり抜く力は、後天的なものであって、どんな人であっても鍛えて伸ばすことができるということ。

子供たちの才能をフルに活かすためのグリッドは、どうすれば伸ばせるのでしょうか。

指導でやり抜く力「グリッド」を伸ばす!

心理学者のキャロル・ドヴェック氏が、興味深い実験をしています。

中学生を二つのグループに分けて数学の授業を行い、指導者の声掛けの仕方を変えてみたのです。

一方のグループは「成功のみのプログラム」で、授業の終わりには必ず褒められ、ご褒美をもらえます。

そんな環境で数週間、数学の問題を解いたのです。

もう一方のグループは「解釈改善プログラム」で、「もうちょっとがんばるべきだったね」と指摘していきました。

数週間後、二つのグループが合流し、難問と易しい問題の入り混じったテストに臨みました。結果はどうなったと思いますか?

褒められてばかりのグループの生徒は、難問を前にして諦めてしまいました。

しかし、解釈改善プログラムのグループの生徒は、粘り強く難問にチャレンジしたのです。

褒められてばかりの生徒たちの方がやる気に溢れているように思えますが「失敗=自分の能力の低さを露呈するので、恥ずかしい」というような、失敗を回避する思考になっています。

逆に指摘を受けてきた生徒は「問題が解けないのは自分の能力が足りないからではなく、努力が足りないだけ」というように失敗への解釈が変わっていたのです。

このように指導者の関わり方によって、生徒の失敗への解釈を変えることが可能となります。

塾講師が自らグリッドを身につける!お手本となる指導者になろう

まずは塾講師自身が、グリッドを身につけることが重要です。

ダックワース氏は、グリットを鍛えるためには「情熱」が重要だと述べています。

情熱の根源は「興味」だと言われ、興味を持ったことに対してさらに深く掘り下げる努力を行うことで、やがて情熱へと変化します。

さらにこの情熱を支えるためには「人々や社会の幸福に貢献したい」という意思が重要です。

これが「目的」となります。自分のやることにそういった意義を感じることができれば、グリットは強くなるのです。

確固たる目的を抱くようになったきっかけとして、若い頃に、目的を持った生き方の手本となる人物に出会っているというケースが多く見られます。

講師がこういった「ロールモデル」になることで、生徒のグリットを鍛えることができるというわけです。

目的を持った生き方は楽なものではありません。困難を乗り越え、挫折に打ち勝つ必要があります。

とても大変なものですが、同時に素晴らしく充実したものでもあります。

生徒が講師の言動を目の当たりにして、それを実感することができれば、目的を持った生き方に憧れを抱くようになり、努力は決して無駄にならないことを学ぶのです。

講師は生徒に、どのような大人に成長してほしいのかを強く語り掛けるべきでしょう。

そしてそれ以前に自分自身が社会に貢献するための目的意識を持ち、そういった取り組みを実践してく必要があります。

やり抜く力「グリッド」と教育まとめ

成績のいい生徒を特別扱いしていると、「固定観念」を植えつけることにもなりかねないための注意が必要です。

「頭の良さはもともと決まっていて、ほとんど変わらない」

「ミスをすることは問題であり、悪いことだ」

心理学者のテウン・パウ氏は、こうした意識を持つ教師のクラスの生徒たちは、上記のような固定観念が強くなると指摘しています。

そしてたくさんの正解を出せるようなかんたんな問題を好むようになるのです。この固定観念は将来的に、社会人となっても継続するもの。

脳もグリットも、筋肉のように鍛えれば間違いなく成長します。

実際に科学雑誌「ネイチャー」で発表された内容によると、新しい課題を克服しようと努力することで、14歳から18歳までの4年間でIQスコアは向上しているのです。

生徒のグリットを鍛える視点は、成績を伸ばすことはもちろんのこと、生徒の可能性を広げる大切な力を育成することができます。

これからの時代、そうしたニーズにまで対応できる学習塾はさらに評判を高め、広く受け入れられていくのではないでしょうか。

 

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