大手塾に勤務し、様々な経験を積むにつれ、自分の塾を持ちたいと思うことは、講師の方なら一度はあるのではないでしょうか?
学習塾は参入障壁も低く、開業コストも安いので、比較的開業しやすい業界と言えます。
しかしどんなに経験を積んでいても、会社経営となれば別ですので、準備がしっかりできてなければ失敗の恐れが高まります。
一般的に、創業から5年の企業の残存率はわずか15%、10年継続する会社は1割にも満たないと言われています。
塾を開業し、経営を安定させるためには「開業準備」段階でしっかり検討することが重要です。
今回は、塾の開業準備の目安と、やるべきことについてご紹介します。
塾の開業準備の目安は3ヶ月
小規模な塾の開業にかかる期間は、短くても3ヵ月ほどかかります。
自宅開校等、事前の準備があまり必要ないのであればもっと短い期間で可能ですが、新たに物件を借りて開業する場合は、物件手配や内装工事等、思わぬところで計画通り進まないことも多いのです。
時間をかければいいわけではありませんが、しっかりと道筋を立てて準備することが必要です。
最初に、開業準備の大切さについてお伝えします。
開業準備はとても大切
塾を開業する際の準備は非常に重要です。
開業後の初期段階は、生徒募集に専念する日々が続くことが予想されます。
折込チラシ、校門配布、ポスティングなど様々な募集方法を試しても、すぐには問い合わせが増えないことが多いです。
このような状況では、募集方法の見直しや立地選びの失敗など、不安に思うことが増えがちです。
徐々に生徒数が増加しても、10名を超えると伸び悩むことは珍しくありません。
地域での認知には時間がかかるためです。
生徒数が10名程度の場合、どれくらいの期間資金が持続するか、30名を超えるためにはどのような戦略が必要かなど、様々なシミュレーションと事前準備が求められます。
特に、開業初期にはアルバイト講師やスタッフを雇う余裕がないため、塾長がすべてを一人で対応する必要があります。
営業活動に注力することも大切ですが、それには実績が不可欠です。
授業の質向上や保護者の満足度向上など、「内部充実」を優先することが、結果的に塾の評判を高め、生徒募集に繋がります。
ある教育コンサルタントは、「生徒数が20名に達するまでは、いかに困難でも内部充実に集中すべき」と指導しています。
これは開業資金の持続性に大きく依存しますので、資金計画は塾開業の命綱となります。
講師から経営者への転換では、単に教育に集中するだけではなく、経営全般に目を向ける必要があります。
開業後、少なくとも半年間は授業に専念できるような体制を整えることが肝要です。
それでは、塾開業の準備について、詳しくご紹介していきましょう。
>>塾の経営は難しい?これから開業を目指す人が知っておきたいこと
塾の開業準備①事業ドメイン・コンセプトを考える
塾名を決定した後、事業ドメイン(事業領域)とコンセプトの設定は経営の基盤となる重要なステップです。
これらは経営の方向性を決定づける要素であるため、多角的な視点から慎重かつ迅速に検討し進めることが必要です。
塾の形態を明確に定めることが重要です。
集団授業か個別指導か、オンライン指導や自立学習指導の導入の有無、ターゲットとする学年層、進学塾か補習塾か、学力向上と人間力向上のどちらを重視するかなど、明確な事業領域を設定し、経営の目指す方向を定める必要があります。
特に資金面のプレッシャーが増すと、コンセプトや事業ドメインを後回しにし、とにかく生徒を集めることに焦点を当てる傾向があります。
しかし、ある塾長の例のように、希望する層とは異なる生徒が入塾することで、経営方針がブレるリスクもあります。
狙っていない層からの反応を引き起こすような曖昧なコンセプト設定は、ミスマッチを生む原因となります。
保護者は「新しい塾」という理由だけで子どもを入塾させることがありますが、そのような場合でも、事業ドメインとコンセプトを明確にし、地域に正しく訴えかけることが重要です。
これにより、望むタイプの生徒を集め、塾のブランドを確立することが可能になります。
開業初期から全てが順調に進むことは稀ですが、しっかりとした事業ドメインとコンセプトを持つことで、長期的な成功への道を築くことができます。
開業までの計画を立てる
学習塾における生徒数は、季節によって変動します。特に春、夏、冬の講習会時期には生徒数が徐々に増加する傾向にあります。
重要なのは、3月の入試シーズンが終わると、中3生が卒塾することが多いため、中3生が多い塾ではこの時期の生徒数の減少に注意が必要です。
以下は、ある塾の生徒数の推移の例です。
4月を基準にした場合の各月の生徒数の変動比率と、それに関連するイベントや取るべきアクションを示しています。
もちろん、塾を開くと決めたら、まずはきちんと計画を立てることが大切です。
この計画の中で、どんな塾にしたいか、どんな風に運営していくかのイメージを描いておくことが重要です。
そして、開業に必要なお金のこともしっかり考えましょう。開業にかかる費用は、ざっとこんな感じですね。
- 法人設立や色々な手続きにかかるお金
- 税理士さんへの依頼費用
- 教室の場所を決めるための物件購入費用
- 教室の中と外をきれいにするための内外装費用
- 駐車場代
- ホームページを作る費用
- 通信機器(電話やパソコン、プリンター、インターネット回線など)
- 生徒さんや先生たちが使う机や椅子、パーテーション
- 電気機器(照明やエアコンなど)
- ホワイトボードや本棚、下駄箱、傘立てなどの備品
- 文房具
- 教材費
これらの初期費用に加えて、毎月かかるランニングコストも計算しましょう。
生徒が10名の時や、収支がちょうどいいくらいの生徒数の時など、いろいろなケースを想定して、1年間の費用をシミュレーションすることが大事です。
計画をしっかり立てることで、塾経営がうまくいくようになるんですよ。
無計画な起業は必ず失敗する
塾経営には、細かく緻密な計画の策定が欠かせません。
最終的に頼りになるのは、やはり自分自身です。
しかし、日々の授業や経営業務に追われる中で、時には冷静な判断が難しくなることもあります。
そんな時、開業前に慎重に立てた計画が頼りの綱となります。
目標とする生徒数や現在の生徒数、教室の雰囲気、口コミや生徒からの紹介など、初期計画からの逸脱を把握することが肝心です。
全てが開業当初からスムーズに進むわけではありませんが、初期計画から大きく逸脱している場合は、適切な軌道修正が必要です。
このためには、現在の状況を客観的に把握し続けることが重要です。
計画なしに進めると、状況の振り返りや比較ができず、現状を正確に把握することが困難になります。計画に基づいて事業を進めることは、企業経営の基本です。
成功への道は無計画では開かれません。経営は常に真剣勝負であり、軌道修正のための基準も含め、しっかりと計画を立てることが求められます。
塾の開業準備②教室や機材などを準備する
次に教室や機材選びです。
これらはこだわらなければ容易に選べますが、しっかりとこだわりましょう。
ここでは、教室選びと機材選びのポイントをご紹介します。
一度選んだら変えられない!場所選びは慎重に
塾経営を始めるにあたって、教室の選択と機材の選定は非常に重要な決定です。
ここでの選択は、塾の印象と機能性に大きく影響します。以下に、教室選びと機材選びの重要ポイントをご紹介します。
教室の立地選びは慎重な決定が求められる
塾の立地は、その成功に直結する要素です。立地条件によって生徒の集客数が大きく変わります。
ある教材販売の営業担当者によると、以下のポイントが重要とのことです。
- 大手が出ている住宅地に注目
- 学校が近くにあること
- 駐車場の利用可能な場所
- メイン通り沿いに位置していること
- 国道の渡りが必要ない場所(特に小学生にとって)
- ライバル塾が少ないエリア
- 家賃と集客のバランスを考慮した駅周辺や住宅地
- 講師の募集を考慮した駅周辺の選定
- 特定の学校に近い場所でターゲット層を絞る
- 教育意識が高い地区の特定
- 自転車通学の場合は、自転車置き場の確保
一度選んだ教室の立地は容易に変更できませんので、慎重な選定が求められます。
初期費用は可能な限り抑える
建物、内装、機材選びにおいては、初期投資を可能な限り抑えることが重要です。
清潔感や機能性は必要ですが、過度なこだわりによるコスト増は避けましょう。
特に、計画通りに生徒が集まらない場合、財政的な圧力が高まるリスクがあります。
大手塾は資金力により高い外観品質を目指せますが、小規模塾ではまずは生徒集客と利益の確保を優先し、無理のない範囲での設備投資を心がけるべきです。
生徒が増えて事業が安定したら、さらなる設備投資や二つ目の教室展開を検討するのが適切です。
塾の開業準備③手続きをする
塾を開業する際には、さまざまな手続きが必要です。
特に重要なのが、税理士や社会保険労務士といった専門家との契約手続きです。
開業の初期段階では、税金対策も重要となるため、個人事業主としてスタートすることが一般的です。
もちろん、株式会社として開業するメリットもありますので、どちらを選択するにせよ、しっかりと計画を立てることが大切です。
無申告は絶対NG
無申告での開業は絶対に避けるべきです。無申告は法律違反にあたり、企業としての資格を問われることになります。
さらに、無申告で開業した場合には様々な罰則が適用される可能性があります。
塾は、子どもたちに教育を提供する場所であると同時に、社会に対する責任も負っています。
無申告での開業が発覚すると、塾のイメージが大きく損なわれるだけでなく、膨大な時間と手間がかかることになります。
最悪の場合、刑事罰の対象にもなり得ます。
無申告で開業すると、延滞税や加算税が課せられ、資金繰りに大きな問題を生じるリスクもあります。
申告を単なる手間ととらえず、適切に手続きを行い、堂々と塾経営を行うことが、成功への重要な一歩です。
きちんとした申告を行い、信頼のおける塾の運営を目指しましょう。
塾の開業準備④集客をする
塾の成功は、開業と同時に行う集客活動に大きく左右されます。
開業直後にどれだけ生徒を集めることができるかが、その後の経営に大きな影響を及ぼします。
最初につまずいてしまうと、その後の立て直しは非常に困難です。
特に、塾業界は口コミで生徒数が増加することが一般的なため、開業初期からの成果が求められます。
スタートダッシュに成功すれば、少なくとも最初の半年から1年は何とか乗り切ることができるでしょう。
そして、その後も継続的な努力によって、生徒数を増やし続け、経営を安定させることが可能です。
ほかの塾との違いを大きく打ち出そう!
開業時には目標とする生徒数を確保し、経営をスムーズに進めることが大切です。
この過程で他塾との差別化を図ることは、新規開業時だけでなく、長期的な経営の継続にも不可欠です。
特に小規模塾では、大手塾と同じ方法では生徒を集めることが難しいため、独自性を前面に出してアピールすることが重要です。
入塾した生徒一人ひとりに対して、個性や学力、学習習慣を考慮した丁寧な対応を心がけることが、生徒や保護者からの高い評価を得る鍵です。
新規開校時の広告やその他の宣伝活動を通じて、地域に存在を知らせることで、転塾を考えている家庭の注目を集めることができます。
最初は生徒数が少なくても、体験授業や日々の授業を通じて良い評価を得ることができれば、その評価はやがて口コミとなり、地域社会に広がっていきます。
他塾との差別化を図り、質の高いサービス提供を心がけることで、生徒数の増加という成果を実現しましょう。
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塾の開業準備まとめ
塾の開業準備はとても大切です。
塾は開業直後の動向が、経営に大きく影響します。
地道な集客活動も必要ですが、開業直後は現場に特化できる環境を整えておきましょう。
立地や機材の選定、初期投資を減らす、各種手続き、集客戦略等、考えることは多いです。
しかし、これらはすべて、塾経営を軌道にのせるには必要になります。
「生徒に最良の教育を」
「自分の思う理想の指導を行いたい」
そういった熱い思いで、塾を開業される方が多いででしょう。
その思いを現場に思いっきりぶつけられる環境を作る。
開業準備は、そのために必要な過程なのです。
何が正解かわからない道ですが、これまでの知識やスキル、経験を活かし、緻密な計画を立て、来るべき開業に備えましょう。
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